たより

もうお別れしてから10年以上経つんだな。

英会話を習っていたイギリスの先生から、ボイスメッセージと写真のたよりが届いた。

久しぶりにアップされた彼のSNSに投稿したのがきっかけで、返事をくれたのだ。

真っ黒に日焼けしたイギリス人の彼と元気はつらつなパートナーの彼女。スペインの人かしら。

そして愛らしい蕾のような女の子がおんぶしてもらって、肩越しからキョトンとこっちをみている。

名前はローズちゃん。本当に愛らしくて、可愛くて。

彼のすっかり逞しくなった姿に圧倒される。家族ができたことのお知らせ、本当に嬉しかった。

自称、貧乏オスカーワイルドだったかな。

異国ジパングに夢膨らませ、はるばるロンドンからやって来た。

けれど、何か満たされない現実にいつも懸命に争って、そこから弾け出るジョークのセンスは、真実を抉るようで、

皮肉にも、これまで経験したことのなかった彼の感性が、わたしの英語熱に拍車をかけてくれた。

どきっとさせられっぱなしだった。

結局日本をあきらめ、それから陸路でアジアの国々を転々とし、ヨーロッパの地まで自転車の旅路。

今スペインの小さな町に住んでいる。また会って話をしてみたい。

「なんだ、まだ日本にいるの?まだひとりでいるの?将来の夢は何?」

英会話学校で教わった質問形式のトレーニング風に、次々質問されて薙ぎ倒されそうだけど。

人生を味わうことをやってゆこうって、また覚醒してくれた、今朝のたより。